社訓カルタ

今日は社長が面白い物を作ったというので、部長と一緒に見に行った。
面白いと言っておいて毎度のこと大体がつまらない物なので、みんな行くのを嫌がるのだが、私は好きでほぼ毎回通っている。
社長にいつも付き合わされている部長には、「付き合ってくれて申し訳ない」「最近の若者にしては偉い」などと褒められているのだが、デスクでずっと仕事をしているのがだるいから暇つぶしに丁度いい、なんて思っているなんて、部長にも社長にも言えやしない。

今回は、”社訓カルタ”という代物を見せてくれた。
文字通りカルタだが、普通のカルタとはちょっと違う。
読み札には、色々な会社の社訓やキャッチコピーが書いてあって、取り札には会社名が書いてある。
まず、やってみようということで、社長が社長室の床に風呂敷を広げて、その上に取り札を並べ始めた。
これだけでも普通の会社にはない、シュールな光景である。
最初は、社長が読み札を読む役で、札を取るのは社長秘書二人と部長と私の四人。
社長が読み上げる。

「天は人の上に人を作らず~」

札には会社名しか書いていないのでどれを取っていいのか分からない。
四人で顔を見合わせていると、社長がどれでもいいから取って裏を見てみろと言うので、
部長が、うちの会社の一番大きい取引先である「株式会社〇〇」と書かれた札を取った。
裏返してみると、同じく社訓らしき文言が書いてある。
ここで、社長が「どうだ!」と言わんばかりに、ルール説明を始めた。
最初から説明しろっつーの。
単純に言うと、読まれた社訓の会社名を当てるカルタである。
札を取ったら、まず会社名を読み上げ、その裏の社訓を読み上げて、読み札の社訓と一致していたら、その札は自分のものになり、間違っていたらお手つきになる。
社訓は深い言葉が多いから、このカルタはためになると社長は言った。
第一弾として取引先の会社ばかり取り上げたからすぐ終わるだろうと社長が言うので、その後100枚全て取り終えるまで遊んだ。
しかし、四人とも取引先の会社の社訓まで把握しているはずもなく、最後の一枚の札を取り終えたのは、定時を4時間30分過ぎた午後10時半だった。
部長は社長室に来た昼過ぎからずっとニコニコしていたが、社長秘書は二人ともずっと無表情で無口だった。
ただ、年配の方の秘書が、最後の一枚を部長が取った時に、ため息を短く吐いたのを私は見逃さなかった。
部長が「これは商品化できますよ。」などと社長に言って、ご機嫌を取っている。
まあ、機嫌を取るまでもなく、社長は終始ドヤ顔だったのだが。
その後、社長室を後にして、さすがにもう遅いので、今日の午後やるはずだった仕事を明日に回すことにして、すぐに帰った。
帰り際に、「社長に顔を覚えられているから、お前にはきっといいことがあるぞ。」的なことを部長に言われた。
そう言われ続けてこの四年間、ちょっとでも月給が上がるわけでもなく、昇進するでもなく、ずっと平社員のままなのだが、まあいい。
この会社のゆるい雰囲気が好きだ。

※この記事はフィクションです

コメント

  1. 脱負け犬人生  より:

    こんばんわ。
    僕の記事を読んでくれてありがとう。
    今日はブログを更新できません。
    広告コードをずっといじってさがしてしていたら
    ブログにいけなかったです。
    ごめんなさい。
    パソコン苦手だからとてもつらいです!!!

  2. ヒューマンガス様の手下P より:

    脱負け犬人生様。
    こんにちは、初めまして。
    コメントありがとうございます。
    ブログ頑張って下さい。
    応援してます。