会場の教室に入り、空いている席を適当に見つけて座った。
教室全体で30人ほどいて、机が2台ずつくっつけられて二人組になっている。
私のペアは隣のクラスの顔だけ知っている奴だった。
試験開始10分前になると、灰色のスーツを着た試験官らしき男が入ってきた。
男は全ての机を廻り、受験者一人一人に一辺が15cmくらいの正方形の紙を配り終えた後、こう言った。
お題は”マンモス”です。あとは自由にやって下さい。一時間後にまた来ます。
なるほど、さっき配った紙でマンモスを折れってか。
でも、マンモスの折り方なんぞ、私は知らない。
そうか!だからペアになっているのか!
一丁マンモスの折り方を聞いてやるかと思って隣を見ると、奴はマンモスなど折ったことの無さそうな顔をしている。
こんな重要な時に、なんて運が無いんだ。
しかも、奴の折り紙は生意気にもマンモスにおあつらえ向きの茶色だ。
許さんぞ。
こうなったら、意地でも私一人でマンモスを折ってやる。
一時間後、私はお世辞にもマンモスには見えない、くしゃくしゃに縮こめられた紙を提出した。
隣の奴はマンモスらしきものを提出していた。
ふざけるな。
一週間後、皆のもとに合否通知が届いた。
不合格なのは私だけだった。
※この記事はフィクションです
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