電気代の値上げについてのニュースが新聞・インターネット・テレビなどあらゆる媒体で盛んに報道されるようになった。
端を発したのは何年か前の冬、「電気代がいきなり前年比10倍になった」というニュースを目にしたこともある人も多いと思う。
なぜ、電気代がいきなり10倍になるようなことが起こったのだろうか。
それはその電力会社の料金体系だけでなく、電力会社が電気を調達する仕組みにも由来する。
電力会社は自社の発電所で発電したり、発電事業者から直接電気を買い付けたりするほかに、JEPX(日本卸売電力取引所)という電力の卸売市場で電気を調達したり、余った電気を売ったりしている。
量は多かれ少なかれ、あらゆる電力会社がJEPXから電気を調達している。
JEPXでは市場原理が働いているので、電気が不足している時には高くなるし、余っている時には安くなる。
一日ごとの価格のグラフがJEPXのホームページで誰でも見られるようになっているので、是非一度見てみてほしい。
2023年4月1日のグラフを見てみると、バケツのような形をしていて、5時30分に14.22円/kWh、8時~15時30分にかけて0.01円/kWh、そして、17時30分に14.19円/kWhと再び値段が上がる。
参考までに、2023年4月1日の天気は全国的に概ね晴れ。
これはどういうことかというと、日中には太陽光発電による電気が余り、タダに近い価格で取引されている一方で、太陽光発電による発電が無い夜間に市場の取引価格は高くなっているということである。
次に2022年3月22日を見てみよう。
7時30分~23時までずっと80円/kWhである。
2022年3月22日は日本列島を寒波が襲い、全国的に雨か雪であった。
太陽光発電による発電が望めない状況で市場で取引される電力価格が高騰し、JEPXが価格にストップをかけたのである。
厳密には異なるが、株式市場でいうストップ高みたいなものだと思ってくれていい。
電力会社の中にはJEPXと連動した料金プランを採用しているところもある。
いわゆる市場連動型プランである。
「電気代がいきなり前年比10倍になった」というのは、上記のような市場連動型プランで契約していて、JEPXでの取引価格の価格の高騰の影響をもろに受けてしまったことが原因である。
市場連動型プランでは平常時は冬でも安く電気を使えていたはずなのだが、近年は石油価格上昇、不安定な世界情勢などもろもろの影響を受けて、JEPXの取引価格が容易に跳ね上がるようになってしまったため、電気代が大きく変動する事態が起こってしまったのである。
~「電力業界のこれから(後編)」に続く~
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